はじめに
アイリッシュ・ハープとは何か。この単純な問いに答えることは意外と難しい。
一義的には西ヨーロッパの島国、アイルランドで演奏されていた/いるハープのことだが、必ずしもアイルランドだけではなく、スコットランドのハイランド地方や島嶼部でも同様の楽器が演奏されていた。
楽器の大きさも決まったサイズがあるわけではなく、膝の上に載せられる小型のものから床に置くタイプの大きなものもある。ダイアトニックに調弦されたものもあれば、ある時期にはクロマティックに調弦されることもあった。
特に、20世紀以降の問題として、ガットやナイロン、カーボン弦が張られた「ネオ・アイリッシュ・ハープ」の登場により、本来の「金属弦」が張られたアイリッシュ・ハープが忘れられてしまったことが挙げられる。
アイリッシュ・ハープとは何かという問いに答えるためには、その歴史を紐解いていくほかに方法はないだろう。
この記事は、アイリッシュ・ハープ奏者、研究者である筆者の研究ノートとして書かれる。これによって、誤解されることの多いアイリッシュ・ハープが正しく理解されるようになれば幸いである。
2015年2月22日 アイリッシュ・ハープ奏者、研究者、教師、寺本圭佑