8. プレトリウス

プレトリウス

ガリレイは当時のアイリッシュ・ハープの調弦法や演奏習慣についての記録を残したが、それがどのような形態であるかは明らかではない。

1619年頃に編纂された『シンタグマ・ムジクム』[1]に17世紀初頭のクロマティック・アイリッシュ・ハープの図像資料が掲載されている。作者はドイツの作曲家、音楽理論家ミヒャエル・プレトリウス[2]で、同書には当時の楽器について図版付きの詳細な記述が見られる。

第32章にハープについて書かれている。

 

「現在のハープは3種類ある。1、一般的で単純なハープは24本あるいはそれ以上の弦が張られており、Fからc1およびa2までの全音階である。2、大型のダブル・ハープ、アルパ・ドッピアは半音階で完全な胴を持っている(弦は駒の上に等しく並んでいるが、間隔は幾分狭い)。3、アイルランドのハープ、アルパ・イルランディカの構造と形は図版XVIIIに見られる。この楽器はかなり太い真鍮の弦が43本張られており、ここから美しい響きが生まれる」(郡司すみ訳)。

ここに描かれているアイリッシュ・ハープは、現存するトリニティ・カレッジ・ハープやラモント・ハープの形態と類似している。大きく湾曲した支柱や大きな共鳴胴の特徴もそのままである。

プレトリウスはこの楽器の調弦法についても記録している。最低音はアルパ・ドッピアと同じC2からE6に至る4オクターヴ強の楽器だった。ガリレイと同様にクロマティックの調弦が行われていたことが確認できるのだが、この楽器が二列弦だったのかどうかについては明記されていない。最低音域のオクターヴには半音は含まれておらず、次のオクターヴにはBフラットとBナチュラルが含まれる。第3のオクターヴには、ほぼすべての半音が含まれているが、なぜかBフラットのみでBナチュラルの音が除外されている。第4のオクターヴにはすべての半音が含まれており、Bナチュラルの音が二重に含まれている。おそらく変則調弦のようなことが行われていたのであろう。変則調弦(スコルダトゥーラ)とは、オクターヴごとに異なる調弦法を行う方法のことで、18世紀のハープ奏者たちも一部にこれを採用していたことが知られている。


[1] 『シンタグマ・ムジクム Syntagma musicum

[2] ミヒャエル・プレトリウス Michael Praetorius (1571 -1621)

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