9. ダルウェイ残欠

ダルウェイ残欠

ガリレイやプレトリウスらの文書から、16世紀後半から17世紀前半にかけて、クロマティック・アイリッシュ・ハープが演奏されていたことは疑いようもない。この時代はアイリッシュ・ハープの黄金時代だったのだが、この楽器の完全なる実例は一台も現存しない。

しかし、クロマティック・アイリッシュ・ハープの残欠と思われる資料が残されている。それは1621年にコーク州クロインのフィッツジェラルド卿[1]のために作られたハープである。所有者にちなんで「クロイン・ハープ」と呼ばれることもあるが、アントリム州のダルウェイ家に代々所蔵されていたため「ダルウェイ残欠」と呼ばれてきた。

ネックと支柱のみが現存しており、共鳴胴は失われている。ネックはヤナギ、支柱はセイヨウイチイで作られている。実に美しい装飾が施されており、ネックと支柱の接合部付近にはエリザベス女王の彫刻が、また、共鳴胴との接合部付近には犬の頭をかたどった彫刻が見られる。さらに、怪鳥コカトリスやドラゴン、ラクダ、ヤギなどの動物も描かれている。

支柱には楽器の製作年が刻まれており、その下に英国王室の紋章が描かれている。支柱の裏側にはアイルランド語とラテン語による文字の書き込みが見られる。そこにはモットーやハープ製作者、フィッツジェラルドが雇っていた召使いや2人の音楽家ジオラパトリック・マクリダン、ダーモット・マクリダン[2]の名前が記されている。

このネックに打ち込まれたピンに着目すると、45本のピンに加え、中音域の部分に7本のピンが上下二段に並んでいることが確認できる。すなわち弦数はおそらく52本だった。この楽器はクロマティックな調弦が行われていたと考えられており、7本のピンが追加されている部分だけ3列に張られていたのではないかという説がある。音域は、C2あるいはD2からC6あるいはD6までの4オクターヴの楽器だった。

ネックが伸びている、大型化、より低い音が出せる楽器になった。


[1] フィッツジェラルド卿 Sir John FitzEdmond Fitzgerald of Cloyne

[2] ジオラパトリック・マクリダン Giollapatrick MacCridan、ダーモット・マクリダン Dermot MacCridan

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