アイルランドの子守唄を集めたアルバム『スーントゥリー 眠りの弦 vol.1』が完成しました!全15曲、20弦の国産ヒノキ製金属弦ハープ「龍のハープ」(op.311)で収録しています。
今回から Apple Music, Amazon Music 等で配信を始めました!ご利用のストーリーミングサービスでお気軽にご視聴いただけたらと思います。私はアマプラを利用しているので Amazon Music で聞いています♪ Spotify は無料でご視聴いただけます。もちろんダウンロードして聞くこともできます。
編集しながら寝てしまったこともあるので、運転中や危険な機械を操作中のご視聴はくれぐれもご注意ください。
収録曲
- 盲目のメアリ・マドゥンの古い子守唄 An ancient lullaby from Mary Madden
- ジョイスの子守唄 Suantraidhe (Soontree). Lullaby, Joyce (1872) 66
- ケリーの子守唄 Suantrai Ciarraighe
- クレアの子守唄 Clare Lullaby from Frank Keane
- オリオナンの子守唄 Lullaby from Sean O Lionain
- ショーホー Sho-ho, or Lullaby
- デリーンデーDerreen Day, Lullaby
- ジェイン・ロスの子守唄 Ancient Lullaby from Miss Jane Ross
- 妖精のラメント、あるいは子守唄 The Fairies’ Lamentation, sometimes called The Fairies’ Lullaby
- コネリーの子守唄 Nurse’s tune from Patrick Coneely
- スライゴーの子守唄 Sligo Lullaby from Mr. Owen O’Conellan
- ゆりかごの聖歌 Cradle Hymn from Mr. Southwell
- クラダの子守唄 Shoheen-Sho in the Costello Collection
- 不機嫌な少年 The Sullen Boy, Lulllaby in the Joyce Collection
- コネマラの子守唄 Suantraidhe, A Lullaby from Mícheál Breathnach
子守唄はアイリッシュ・ハープの歴史や妖精伝説と深いつながりがあります。ケルト神話の「善き神」ダグダのハープ奏者ウイヘは、ハープのふしぎな魔力を用いて敵である巨人のフォモール族を倒しました。ダグダはウイヘの功績をたたえて3種の音楽をハープで奏でました。ハープの鉄の弦からは眠りの音楽 「スーントゥリー suantraí」、真鍮の弦からは笑いの音楽「ギャントゥリー geantraí」、銀の弦からは涙の音楽 「ゴルトゥリー goltraí」 が生まれ、それがアイルランド音楽の源となったと伝わります。
アイルランドの子守唄を調べて弾いていると、単に子どもを寝かせつけるだけの単純なものではなく、どこか薄気味悪い内容のものもありました。楽曲解説から一つ紹介します。
盲目のメアリ・マドゥンの古い子守唄 An ancient lullaby from Mary Madden
「アイルランドの画家、民俗音楽収集家のジョージ・ピートリ George Petrie (1789-1866) が1855年に出版した曲集に収録。南部リムリックの貧しい農民出身で、盲目のバラッド歌手メアリ・マドゥン Mary Madden の歌から1854年にピートリが採譜した。原タイトルは “seo hu leo. An Irish Lullaby” である。彼によるとインドやペルシャの子守唄の旋律との類似性が認められるという。
アイルランドの子守唄は単に子どもを寝かせつけるようなものではなく、妖精信仰と深いかかわりがあり、そこはかとなく不気味な意味をまとっている。この曲に関してピートリが古物研究家オカリー Eugene O’Curry (1794-1862) のコメントを引用しながら長い解説を書いている。
「一年と一日前」に妖精の砦に連れ去られた女性(乳母)の嘆き。Sho hoo lo, sho hoo lo,というリフレインで(妖精に連れ去られた)子どもを寝かしつけつつ、ここから助け出してほしいという願いを混ぜながら歌っている。彼女は妖精の世界の様子(エールがたくさんあって、老人が縛られており、美しい子どもたちがいて、身ごもった若い女性たちもいる)を語りつつ、夫に「ろうそく」と妖精の馬車馬を倒す「黒い柄のナイフ」をもって明日、助けにくるように伝えてほしいと願う。もし間に合わなければ自分は妖精の世界の女たちの女王になってしまうだろう、と。
オカリーによるとこの詩にはエールが出てくるが、ウィスキーが登場しないことから、これが一般に愛飲される過去300年以前(16世紀以前)に作られた歌だと示唆している。縛られた老人は、妖精が美しい子どもや女性を連れ去るときに代わりに置いていくものと信じられていた。「ろうそく」はキャンドルマス(2月2日の聖燭祭)を暗示しているとされ、「黒い柄のナイフ」は妖精との戦いで唯一有効な武器とされた。一度刺せば妖精に致命傷を与えるが、二度刺してしまうと一度目の攻撃が無効化されてしまうのであった。「1年と1日」という言葉が登場する。妖精に連れ去られた人は、この期間内であれば現実世界に連れ戻せるが、それを過ぎると永遠に失われてしまうと信じられていたのだ! オカリーのいた地域では(カトリック、プロテスタント問わず)このような迷信が強く残っており、町で若くして突然亡くなってしまったものがあると、妖精の仕業だと考えて、墓を掘りおこしたり、薬草師(herb-men, herb-women)の力を借りて取り戻すための儀式が行われていたという。もちろんそんなことをしても誰も戻ってこなかったのだが、信じて疑わず7年も儀式を続けたこともあったとか」。
【PDF曲集】『スーントゥリー 眠りの弦 vol.1』寺本圭佑編著
アルバムをより楽しんでもらえるように、収録曲の譜面を作成しました。私が制作している20弦の金属弦ハープ用の譜面ですが、それ以外のハープや楽器でも演奏可能です。
https://cinamon.thebase.in/items/104550791
春から金属弦ハープを始めたいという方は、横浜、日吉と京都、北大路で教えていますのでお問い合わせください。私が制作したハープのレンタル、販売もしています。
https://note.com/embed/notes/n81f21886a4e5
5月17日(土)15時から日吉のアトリエシナモンにて、アルバムリリースを記念した演奏会を開催します。ぜひお越しください。