「失われたアイルランドの響きをもとめて 寺本圭佑 金属弦アイリッシュ・ハープ リサイタル」

2018年4月8日(日)14:00開場 14:30開演

「失われたアイルランドの響きをもとめて
寺本圭佑 金属弦アイリッシュ・ハープ リサイタル」
旭堂楽器店 2F サンホール(京都市中京区寺町通夷川上ル)
京都市地下鉄東西線「市役所前」駅11番出口より徒歩8分
京阪「丸太町」駅1番出口より徒歩12分
京都市地下鉄烏丸線「丸太町」駅5番出口より徒歩16分
前売り:3500円
当日:4000円
ゲスト:山口亮志(クラシックギター)
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2017年12月21日横浜サルビアホールでの演奏から一部を紹介。

今回は、アイリッシュ・ハープ年代記と称すべき珠玉の名曲を24セット演奏予定。

使用楽器はすべて寺本圭佑自身が製作し、金箔と岩絵具による美しい装飾が施された金属弦ハープ。アイルランドの複層的な音世界を古式ゆかしきアイリッシュ・ハープで表現する。

副題の「失われたアイルランドの響きを求めて」とは、私が長年追求し続けてきた理想とそれに基づく活動内容を一言で表現したものです。

 

アイリッシュ・ハープとは

アイリッシュ・ハープは西洋起源のハープの中ではもっとも古い部類に入り、11世紀頃にその原型が完成したとされる。同国の紋章とされ、パスポートや硬貨に描かれている。最古の実例は14世紀頃に作られた国宝、トリニティ・カレッジ・ハープだ。伝統的なアイリッシュ・ハープの共鳴胴は1本の木をくり抜いて作られ、金属弦が張られていた。そこから哲学者ベーコンが称賛した長く、美しい残響音が得られた。16世紀後半から17世紀前半はアイリッシュ・ハープの黄金時代で、英国やヨーロッパの宮廷でもこの楽器が好んで演奏された。イタリアのヴィンチェンツォ・ガリレイ(ガリレイの父)は、長い爪をとがらせて演奏するアイリッシュ・ハープについて書き、ドイツのプレトリウスは43本もの弦が張られたクロマティックな金属弦アイリッシュ・ハープについて記録した。アイルランドでは失明したものがハープを学び、放浪のハープ奏者となる習慣があった。なかでも有名なのが1670年に生まれたカロランで独自の作曲によって一時代を築いた。彼は1738年の死後偶像化され、国民的音楽家とみなされるようになった。カロランの死後もドミニク・マンガンという優れたハープ奏者が活躍していたが、彼の演奏は「ささやくような音色」だったという。このような奥ゆかしい音楽は、派手な音楽が好まれた当時の聴衆の趣味からは大きく離れていた。その他、様々な要因からアイリッシュ・ハープ音楽は衰退していった。失われつつある伝統を保護し、盲目のハープ奏者を奨励する目的で、1792年にベルファストでハープフェスティヴァルが開催された。このとき、老ハープ奏者ヘンプソンらが継承していた古い音楽を鍵盤楽器奏者バンティングが採譜した。その後、バンティングはハープ協会を設立し後継者育成が行われた。協会で学んだ最後のアイリッシュ・ハープ奏者パトリック・バーンが1863年に他界したことで、アイリッシュ・ハープは歴史の表舞台から姿を消す。20世紀初頭には、ガット弦が張られたネオ・アイリッシュ・ハープが現れるも、古いアイリッシュ・ハープとは歴史的連続性のない、音色も奏法も全く異なる楽器だった。その後、金属弦アイリッシュ・ハープ久しく幻の楽器となったが、1980年代にアメリカのアン・ヘイマンが金属弦ハープのメソッドを確立し、徐々に演奏されるようになった。寺本は金属弦アイリッシュ・ハープの復興運動に献身しており、演奏、研究、教育、製作を通してこの楽器の魅力を広める活動を行っている。

寺本圭佑(てらもとけいすけ)

京都市生まれ。15歳から雨田光示、坂上真清両氏からハープを学ぶ。シボーン・アームストロング、アン・ヘイマンらから金属弦ハープの手ほどきを受ける。

音楽学を樋口隆一氏に師事し、資料研究の方面からもアイリッシュ・ハープの歴史と真実を追求。

18世紀以前のアイリッシュ・ハープの研究により芸術学博士(明治学院大学大学院)。

19世紀末に伝統の途絶えた「金属弦アイリッシュ・ハープ」を専門とし、この楽器の魅力を伝えるため、全国で演奏やレクチャーコンサート等を展開。

京都と横浜で金属弦ハープ教室を主宰し、後進の育成に携わる。

近年では、独学で小型金属弦ハープの制作にも取り組んでいる。

2016年、京都平野神社の委嘱により制作した桜材の金属弦ハープを奉奏ののち奉納。

2017年、BS-TBS「こころふれあい紀行~音と匠の旅~」第159回「ケルトの音色を現代に」にアイリッシュ・ハープ研究家として出演。

『ケルト文化事典』(東京堂出版)の「ハープ」「オカロラン」等の項目を担当。

 

曲目解説(寺本圭佑)

 

  1. アイリーン・アルーン Eileen A Ruin, Carol O’Daly

キャロル・オダリーが作曲したと言われるラブソング。伝承によれば、オダリーはアイリーンという女性と将来を約束していた。だが、父親の反対により別の男と結婚することになった。アイリーンへの想いを断ち切れなかったキャロルは吟遊詩人の姿に変装し、結婚式場に紛れ込んだ。その時キャロルは「いとしいアイリーン」というこの曲をハープで奏で歌った。アイリーンはその男がキャロルであることに気づき、ふたりは式場から逃れて駆け落ちしたという。作曲者のキャロルは14世紀の人物とも、17世紀の人物とも言われており定かではない。今回は112歳まで生きていたデニス・ヘンプソン Denis Hempson (1695-1807) が継承していたヴァージョンを演奏。

  1. ダ・ミヒ・マヌム~マクロイドのサリュート Da mihi manum, McLeod’s Salute, Rory dall O’Cathain

16世紀後半から17世紀前半に活躍していた盲目のハープ奏者ローリー・ダル・オカハンの作品。オカハンはアイルランド北部出身の貴族で主にスコットランドで演奏活動を行っていた。「ダ・ミヒ・マヌム」はローリーがスコットランドのエグリントン城を訪問していた際、女城主とケンカをしたあと、和解のしるしに送った作品。

  1. カナリー Canaries, Scottish

カナリーはスペイン領カナリア諸島にまつわる舞曲で、17世紀のヨーロッパで流行していた。今回は17世紀スコットランドのストラロッホ手稿譜(1627-29)に記録されていたヴァージョンを2曲続けて演奏する。

  1. ローリー・オムーア Rory O’More, Irish

エリザベス1世の時代のアイルランドの領主の名前が付けられたマーチ。初めて楽譜に記されるのは1665年のプレイフォー

ドの曲集である。ここでは、≪ワシントンのマーチ≫、≪新しいモリスコ≫というタイトルで知られていた。

  1. セリア・コネラン~モリー・マカルピン Celia Connellan, Molly MacAlpine, William Connellan

17世紀後半に活躍したアイルランド西部スライゴー出身のハープ奏者コネラン兄弟の作。「セリア・コネラン」はダニエル・ブラック Daniel Black (1717-c.1796) ら18世紀のハープ奏者たちに弾き歌いされていた。今でもアイルランド西部のコネマラ地方で歌い継がれているラブソング。18世紀のハープ奏者カロラン Turlough O’Carolan (1670-1738) はコネランを崇敬しており、「モリー・マカルピン」を作曲したコネランのようになりたいと言っていたという。後世この曲は「カロランの夢」というタイトルで知られるようになる。

  1. ワイグトン伯のラメントCumha Iarla Wigton, Earl of Wigton’s Lament, Scottish

スコットランド、パースシャーのフィドル奏者ダニエル・ダウ編纂の曲集 (1775) に収録。このラメントは1619年にスコットランドの貴族、初代ワイグトン伯のジョン・フレミング (1567-1619) のために書かれたのではないかとされる。この曲はバグパイプで奏されるピブロッホの形式によって書かれているが、元来はハープで演奏されていたと考えられている。

  1. 森の花~ロード・ダンディーのラメント~スカイ・ボート・ソング Flower of the forest, Lord Dundee’s lamentation kill’d at the Battle of Killikrankie, Skye boat song, Scottish

「森の花」はスコットランドの古い旋律で、フローデンの戦い(1513)にまつわるとされる。映画「ピアノレッスン」(1993)でも用いられた。「ロード・ダンディーのラメント」は「キリクランキーの戦い」(1689)で戦死したスコットランド貴族ロード・ダンディーのために書かれた哀歌。「スカイ・ボート・ソング」は「カローデンの戦い」(1746)に敗れ、スカイ島から逃れた小僭王ボニー・チャーリーにまつわる19世紀後半の曲。

  1. ワイルドギース~リムリック・ラメンテーション Wild Geese, Limerick Lamentation, Myles O’Reilly

1691年、アイルランドは英国との「ウィリアマイト戦争」に敗れ、18世紀を通して英国からの支配が強化されることとなる。この時、最後まで抵抗していたのがアイルランド南西部の都市リムリックだった。大陸に逃れ傭兵となったアイルランド人たちは「ワイルドギース」と呼ばれ、英国への雪辱を誓った。この時にハープ奏者オライリーによって書かれた悲しみの音楽。

  1. シーベグ・シーモア~カロランの杯 Sheebeag Sheemor, Carolan’s cup, Turlough O’Carolan

アイルランドの盲目のハープ奏者カロランは、ウィリアマイト戦争終戦の1691年から演奏活動を開始した。彼の処女作が「小さな妖精、大きな妖精」を意味する「シーベグ・シーモア」だった。当時アイルランドで歌われていた「美しい郭公」という民謡をカロランがハープ音楽に書き換えたもの。1738年、マクダーモット・ローの館で病の床に伏したカロランは、お気に入りの杯で最期のウィスキーを所望した。「カロランの杯」はこの逸話にまつわる曲。

  1. プリンセス・ロイヤル Princess Royal, Carolan

「プリンセス・ロイヤル」は英国由来の曲ともカロランの作ともいわれ、20世紀初頭に音楽学者の間で激しい帰属論争が行われていた。プリンセス・ロイヤルという用語自体は英国王室の長女に与えられる称号なのだが、カロランはこの曲をマクダーモット・ロー家の娘に送ったという。

  1. エレナー・プランケット~ジョン・ジョーンズ Eleanor Plunkett, John Jones, Carolan

「エレナー・プランケット」はカロランの作品として有名だが、1950年代に音楽学者オサリヴァンによって初めて出版されるまでは広くは知られていなかった。カロランは自分のスーツを仕立ててくれたジョン・ジョーンズへの返礼としてハープ音楽を献呈した。ヘンプソンのレパートリーでもあり、古いハープ音楽の要素を色濃く残しているとされる。

  1. コール夫人 Cole, Carolan

カロランはアイルランド中を旅しながら、貴族や地方の有力者の婚礼に招かれ、彼らを称える詩と音楽を送っていた。この曲も北部ファーマナ州のジョン・コールとジェーンの婚礼の際に作られた。正確な年代は不詳だが音楽学者オサリヴァンによると1718年から26年の間とされる。

 

休憩

 

  1. カロランズ・ウェルカム~プランクスティ・サフィ Carolan’s welcome, Planxty Safaigh, Carolan

「カロランズ・ウェルカム」はカロラン作と伝わるタイトル不詳の曲だったが、1979年ローマ教皇のアイルランド訪問の際、チーフタンズがこの曲を演奏したことで、今のタイトルで知られるようになった。「プランクスティ・サフィ」は1810年にベルファストのマルホランドが出版した曲にのみ記された珍曲。

  1. モーガン・メーガン~ヒュー・オドネル~オフリン Morgan Magan, Hugh O’Donnell, O’Flynn, Carolan

カロランの楽しい音楽のセット。「モーガン・メーガン」はカロランの生前1724年に出版された曲集に見られる。「ヒュー・オドネル」は18世紀のハープ奏者チャールズ・バーン Charles Byrne (c.1712-aft.1810) やヒュー・ヒギンズ Hugh Higgins (c.1737-1796) のレパートリーだった。「オフリン」はカロランがはじめにハープを学んだマクダーモット家の執事ウィリアム・オフリンだと考えられている。彼は死の床にあったカロランに最後のウィスキーを渡した人物でもあった。

  1. カロランの音楽への別れ Carolan’s farewell to music, Carolan

カロランの作品はハープ奏者だけではなく、18世紀にアイルランドで発明されたイリアン・パイプス(肘でふいごを押すバグパイプ)奏者にも伝承されていた。カロランの白鳥の歌のひとつとされるこの曲も、パイプス奏者オファーレルのレパートリーで19世紀初頭に出版された。連続する下降音型が死を暗示している。

  1. 静かに扉を開けてくれ~あの晩を覚えている? Open the door softly, Do you remember that night?

前者は18世紀の盲目のハープ奏者アーサー・オニール Arthur O’Neill (1734?-1816) のレパートリー。アイルランドの伝統音楽に特徴的なミクソリディア旋法が使われている。「あの晩を覚えている」は若い寡婦によって18世紀頃に作られたアイルランド南部の美しい伝統歌。彼女の夫は婚礼の夜、親戚を見送るために船でシャノン川を渡っていたときにおぼれ死んでしまった。

  1. 机の下から出てきた猫~パイパーズ・ダンス Whish, cat from under the table, pipers dance, Irish

18世紀のハープ奏者チャールズ・バーンのレパートリー。彼は西部リートリム出身で、盲目の叔父からハープを学んだという。パイパーズ・ダンスはKiss me lady という別タイトルでも知られ、ハープ奏者に好んで演奏されるレパートリー。

  1. 乳しぼりする美しい娘 A pretty girl milking her cow. Irish

盲目のハープ奏者アーサー・オニールのレパートリー。日本映画『深夜食堂』の主題歌に使われたことでも有名になった。伝承によると妖精から人間が学んだ音楽と言われている。

  1. ドラモンド城~ニール・ガウのラメント Drummond Castle, Niel Gow’s lament for the death his second wife, Niel Gow

スコットランドのフィドル奏者ニール・ガウ Niel Gow (1727-1807) の作品。息子たちを先に亡くしたガウは、再婚相手のマーガレットにも先立たれてしまった。失意の中でガウが再びフィドルを手に取って奏でたのがこのラメントだった。ガウの母方の家には放浪のハープ奏者がよく訪れていたので、彼の作品はハープ音楽の影響も受けていると考えられる。

  1. ボーイズ・オブ・ブルーヒル~ジンリキシャ The Boys of Bluehill, Jinrikisha, Irish, American

アイルランドのホーンパイプと呼ばれる4分の4拍子のダンス音楽。ジンリキシャは1883年にアメリカで出版された『ライアン・コレクション』から。同曲集にはFijiyamaというタイトルの曲もみられ、日本との関連は不明だが、開国後間もない日本へのエキゾティックな思いを込めて名付けられたのであろう。ぐるぐる回る音型が車輪の回転を模倣しているようで楽しい。

  1. 若者の夢~庭の千草~ダニー・ボーイ The young man’s dream, The last rose of summer, Danny Boy, Irish

「若者の夢」はハープ奏者デニス・ヘンプソンのレパートリー。彼はアイルランド北部デリー州のリマヴァディに住んでいた。ある老フィドル奏者が(おそらく)彼から学んだ旋律が、ジェーン・ロスという女性によって楽譜に書き留められ、ダブリンの民俗音楽収集家ジョージ・ペトリ George Petrie (1789-1866) に送られた。1855年、ペトリはこの曲を「タイトル不明」の曲として出版。その後、英国の弁護士ウェザリーが新しい歌詞をつけて「ダニー・ボーイ」として広く知られるようになった。また「若者の夢」のヴァージョン違いが「ブラーニーの木立」という曲として伝承されており、詩人トマス・ムーアによって「夏の終わりのバラ」(1813年)という歌に書き換えられ、日本に来て「庭の千草」(1883年、原題は菊)として知られるようになった。

  1. アイルランドの子守歌~ピーターのペリーボートSuantree, Peter’s Peerie Boat, Irish, Tom Anderson

1911年にアイルランド南部のフィドル奏者フランク・ロシェが出版した曲集に見られる子守歌。「ピーターのペリーボート」はシェットランド島のフィドル奏者トム・アンダーソンの陽気なジグ。

  1. フラーへのフライト Flying to the Fleadh, Patrick Daney

ベルファストのパイプ奏者パトリック・ディヴィが作曲した8分の9拍子のスリップ・ジグ。ディヴィが南部ケリーで行われたフラー(フェス)に参加するときに飛行機で行こうとしたときに作られたとされる。優美な曲でハープでもよく演奏される。

  1. アメイジング・グレース~ドーハス Amazing Grace , Dóchas, John Newton, Irish

「アメイジング・グレース」はイギリスの奴隷商人で後に牧師となったジョン・ニュートンが1772年に作詞した讃美歌。ドーハスはアイルランド語で「希望」を意味する。アイルランド南部コークの守護妖精の伝説にまつわる18世紀の音楽。

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